おせち「凛」からのメッセージ

元旦の節句料理でもある「おせち」にはいろいろな云われがあります。
それは、素材の生命力を目の当たりにした人、調理した人が紡ぎ出した物語であり、
メッセージではないかなと毎年作るたびにその想いを深くします。

元旦の夜に書いていましたが、今年は、なんだか出せなくなってしまいまして、今更感ありありですが、どなたかに響くものがあったらと願いまして、こちらに投稿いたします。
これをお料理と共に届けられたらベストなのですが、作っている当人のリアルな実感で、そこがかっこよく届けられないところがわたしだよなぁという現時点です。

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【たたきごぼう】
【きんぴらごぼう】

ごぼうはその形状にちなんで「細く、長く、幸せに」という願いがあります。
おせち『凛』では、ごぼうは「たたきごぼう」「きんぴらごぼう」「梅味昆布巻き」と3つの形で登場しました。

繊維を叩いて柔軟にしたごぼうに、ごまの香り漂う和え衣が絡む「たたきごぼう」。
一方の「きんぴらごぼう」は、「はっとする~」でもお馴染みのぴりっと辛めでごぼうの繊維の強さを感じる一品です。
昆布巻きは、鮭や鰊(にしん)で作られることが多いですが、
ごぼうを昆布で巻いて干瓢で結んで、梅干しと共にコトコトと煮込みました。
梅とごぼうは好相性。昆布は、よろこんぶ♪と語呂にもかけています。

★ごぼうの「細く、長く」は、よく言われる『継続は力なり』ではありますが、
息切れしない程度に、ほどほどによくやりましょうとのメッセージ。
無理!と思うことは早々に見切るチカラも必要ということです。

★たたきごぼうは、ごぼうの真骨頂である繊維を叩いているわけです。
ゆえに「柔軟にね、固定観念を手放そうね」のメッセージ

★一方のきんぴらごぼうは、強靭な繊維を敢えて細く刻んでいます。
あなたの繊細さはあなたの強さでもある、あまり人には見せない部分かもしれないけれど、
あなたの本質、根幹だからこそ大切にしてという祈りがあります

【梅味昆布巻き】
【伊達巻】
【手綱こんにゃく】

この「巻く」と「結ぶ」もおせち料理の特徴です。
巻物は、書物の元型であり、智慧をつけていくことの象徴と考えられています。
「伊達巻」は、伊達者=しゃれ者=目立つという意味で卵の黄色。
伊達巻が伊達政宗の大好物だった説もネット上には散見されますが真実はいかに?
真だらをすり身にし、卵白、大和いも、卵を使ってオーブンで焼き上げて、いわゆるはんぺんを作り、
そこから伊達巻を仕上げています。

★伊達巻からのメッセージは「自らの経験から得た智慧を語れる人はやはりかっこいい!」ということ

★結ぶは、やはり、縁を結ぶです。「手綱こんにゃく」もそんな云い伝えから、
切り込みを入れて、くるんとひっくり返します。
このとき、切り込みが大き過ぎると煮たときによれてしまうのです。
縁や絆がよじれないように「ご縁は丁寧に紡ぎましょう」とのことです。
こちらは、昆布だしと醤油のみで土鍋でじっくりとコトコトと煮切りました。

昆布は地味な存在ではありますが、アミノ酸の宝庫です。
干瓢は、冬瓜などの仲間でウリの一種である「夕顔」の果肉を薄く細長くむいて乾燥させた食品。
なんでそんな手間のかかることをやったんだろう?と干瓢の誕生秘話には興味が生まれます。
伸縮性があって、結べる、留まる、希少な食品です。

★ごぼう×昆布×干瓢による昆布巻きは、質実剛健過ぎるぐらいの一品ですが、
そんなにストイックじゃなくていいかも~?!がメッセージ。
なるほど、わたしも来年ちょっと変えてみようかな笑


【黒豆】
おせちの定番「黒豆」は、まめまめしく今年も元気で働けますようにの願い。
錆びた古釘や還元鉄を使って、
煮ることでつやつやの黒色に煮あがります。
抗酸化力の強い黒豆ゆえの煮方で、調理はまさに科学を実感するお品です。
今年、丹波の粒の大きな黒豆を入手することができたので、
重曹を使って柔らかく煮てみましたが、
空気に触れる上の黒豆は皆さんが食べる頃には皺が寄っちゃったかなー、
汁たっぷりパックにしてお渡しするのがいいかなーと悩む一品ではあります。

★「まめまめしく」「コツコツ」って、よく言われるけれど、なかなかに難しいこと。
特に二層性のホルモンに支配されている女性は、男性に比べて、継続が難しかったりしがち。
でも、苦にならないことをたとえ途切れてもやり続ける、そんな姿勢でよいのではないでしょうか。

【海老のチリソース】
背中がくるんと丸まった海老は長寿のシンボル。
大晦日の年越しそばの海老の背は真っすぐで売られますが、
おせち料理の海老は丸まっているのが定番というたった一日の手のひら返しが定番になっている文化が面白いです。
今年も、その華やかな赤に敬意を表して「海老のチリソース」を入れさせて頂きました。

★海老チリのこころは…「年を重ねるほどの存在感、華やかさ。粋なばぁちゃん、じぃちゃんになっていきたいものです」

【田作り】
かたくちいわしの小魚(ごまめ)を使った「田作り」は、
五穀豊穣を願い、田畑に肥料としてごまめを撒いたことから名づけられた祝い肴三品のうちのひとつ。
じっくりと煎ってから、醤油、酒、みりんで絡めました。

★甘過ぎず、ベタベタしていなくて好き!という方と、どうにも好きになれないという方と二分されるお正月お料理。
煎っていてもなんともいえない魚臭が充満します笑
まぁ、苦手でも毛嫌いせずに一口だけどうぞー滋養ですから!とかたくちいわしさんから。

【花れんこん】
【れんこんボール】
♪穴のあいたれんこんさん♪は、野菜の中でも地中で横に這う希少な存在です。
たくさんの穴が開いていて、将来の見通しがよいと縁起をかつぎます。
れんこんは種が多いことから「子孫繁栄」の願いも込められた食材。
当店おせちでは、お花型に切る「酢れんこん」と破魔矢に刺さった「れんこんボール」です。

花れんこんがほんのりピンクなのは、赤梅酢の力。
梅酢とりんごジュースを使って爽やかな甘みを演出しています。
「れんこんボール」は、れんこんと金時人参のすりおろしから作っています。
のどや肺に効くれんこん、これからの寒い時期を乗り越えるチカラ強い味方。

★「美しさは強さ。花ある美しさは、強靭な強い意志から」
そんなれんこんからのメッセージですが、調理法を変えるとまた違う個性を発揮してくれるれんこん。
れんこんボールはもちもち感を出してくれています「引き出しの多い人」れんこんです。

【栗きんとん】
栗きんとんは、黄金色に輝く財宝にたとえて、豊かさを願う料理です。
さつまいもを裏ごしして、紅玉りんごを甘みに使いさっぱりと仕上げたきんとんの中に、
秋の実りの代表格である栗の寒露煮を入れました。

★人生の酸いも甘いも~と言いますが「甘い」をたくさん受け取りましょう、どうか「わたしなんて」と思わずに。

【紅白かまぼこ】
「紅白かまぼこ」もおせちの彩には欠かせない存在。今年も小田原の籠清さんにお世話になりました。
紅はめでたさを、白は神聖さを表現しています。
その昔、かまぼこ作りにもチャレンジしたことがあるのですが、
滑らかさを出すのはタイヘン。たらの小骨を取り除くのもタイヘン。めでたさを表現できるほどの美しさはほど遠いと感じ、
籠清さんのお世話になっています。

★ピンクと白ってうきうきする色の組み合わせ。今年も自分と相思相愛で♪というメッセージです

【焼きなます】
なますも同様に紅白の祝い料理ですが、
『凛』では、「焼きなます」という火を入れたお料理をご提供しています。
りんごジュース、醤油、梅酢を使った三杯酢のさっぱり味がお正月の味として毎年喜ばれています。

★塩梅とはよくいったものです。
甘辛とか、ツンデレとか笑、ギャップ萌えとか笑、自分の中にある相反する2面、両方とも生かしていきましょう☆
それが絶妙になる♪焼きやますからの伝言です

【菊花蕪】
「菊花蕪」は、冬が旬のかぶをめでたい菊の形に飾り切りしたお祝い料理。
生の酢の物が入ることで、ご馳走の消化促進に。
かぶを塩水で漬けてから、甘酢に漬け込んでいます。
保存食の智慧と白い美しさが同居した一品。才色兼備です。

★女性は誰でも才色兼備。あなたならではの「才」と「美(色)」を自分で探し、
認めていくことから2024年をはじめませんか

【八ツ頭】
八ツ頭を目の前にすると、さぁこのゴツゴツしたお芋をどこから攻略したらいいものかと毎年悩みます。
でも、とにかくまず最初の一歩をと、真ん中を切る。
すると全貌が見えてきて、次第に次に打つ手もわかってきます。

★「やる前から考え過ぎない」「やりながら考えよう」という試行錯誤の権化みたいな存在。
でも、試行錯誤を繰り返す中でついた智慧は当たり前にその人を活かすよね。
頭角を現すよね。それは血筋ともなっていくということを伝えてくれる屈強な野菜です。味は優しいですね

【くわい】
くわいの形状から「芽が出る」という縁起食材です。
素揚げしてもほくほくと美味しいくわいですが、ぴりっと苦みを効かせた煮物に仕上げました。

★自分の中にある何かの芽って、自分では当たり前のことなので自覚できないことも多いです。
だからこそ、肯定的な気づきや指摘をしてくれる人との関係を大事に、耳を傾けてみてください

【金柑寒露煮】

金柑は、ビタミンCの宝庫であり、地味になりがちなおせち料理の華的存在。
うっかり種が残っているとトラウマになる…がゆえに、
当店では半分にカット、断面美も楽しみながら召し上がって頂く寒露煮にしました

★色といいフォルムといい、艶といい、何よりも見た目が可愛らしい。
そこに反応する感性から美容と健康が約束されていますね

【ぶり照焼】
ぶりは冬の旬のお魚でもありますが、
成長に応じて呼び名が変わることから出世と出生を運んでくれる縁起物とされています。
とろけるような「ぶり照焼」、毎年一番美味しかったという声も届くほど。

★役割や立場が自分を相応に引き上げてくれる…こと、多々ありますよね。
そんなチャンスが来たらぜひ受け入れていきましょう。

【白いんげん豆の柚子饅頭】
こちらは中に、百合根と銀杏が入って柚子をあしらった白いんげん豆のお饅頭です。
百合根は栄養価も高く強壮効果の高いほっくり繊維質の食材。
百合根は銀杏と合わせて肺や膀胱に作用する滋養食品。

★百合根は、あれ、いたの?というような、主張し過ぎない、でも確実に力を発揮するさりげなさをもった食材。
気づく人は気づきます

★銀杏は、わかりやすく硬い殻の中に潜む滋養。
ひと癖、ひと手間の栄養価。変人であることを受け入れてはいかが?というメッセージです

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おしまい